延世大マガジン | ACCESSlCREATIVE CULTURE HYUNJUNG KIM
延世大学の起業サークルを母体とする文化マガジンACCESS(Vol.7 No.2『Venture』、2020 FALL)が、「Creative Culture」コーナーでキム・ヒョンジョン作家にインタビューしました。水墨淡彩とコラージュを併用する制作手法、自画像連作の後に新たに挑んでいる名画パロディーシリーズ、「作家は一人の起業家」という経営マインド、持続可能な文化の素材としてのNaesoongシリーズ、そして着想を与えてくれる本・音楽・映画などについて、作家本人が答えたインタビュー全文が掲載されました。誌面インタビューとあわせて、制作過程を収めた映像も公開されました。
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ACCESS 7-2 Venture
2020.05.12
Creative Culture
執筆者:チョン・ヘス
PM:ユ・ヒョンダ
Q. キム・ヒョンジョン先生の作品を見ますと、ご自身の自画像をもとに実に多様なメディアを活用して制作されていることが分かります。基本とされている水墨淡彩の上に、コラージュだけでなく写真、プラスチック混合材料、3Dプリンティングなど、さまざまな試みを見せてこられました。主に用いられる水墨淡彩ならではの魅力は何でしょうか。また、今後新たに使ってみたい材料や制作方法はありますか。あるいは作品制作以外に、最近関心を持っていて挑戦してみたい新しい分野はありますか。
A. 作品の制作には主に水墨淡彩とコラージュの技法を用いています。まず水墨淡彩の魅力を一言で定義するなら、澄んで透明感のある色彩と、そこに込められた哲学だと思います。
東洋画といえば主に韓国・中国・日本の三か国の絵を指しますが、中国は墨の伝統が深く、日本は彩色の技法が発達しました。地理的に韓国は中国と日本の間に位置する国であるため、両国の影響を受けてきました。そのため、二つの技法を併用する手法こそが韓国伝統の技法だとする学者も多くいます。
また東洋では、水墨は宇宙の無窮さを内に抱いていると語られます。
このように宇宙の無窮さを抱いた墨で、韓服のチマ(スカート)を表現します。チマの広がりを水墨で描くことは、私にとって非常に意味のある作業です。女性の広いチマの中は多くの秘密を秘めた宇宙のようであり、その内心は知り得ないものだと考えて制作を進めており、そこから無窮さの心象を得ています。老子は、有と無、陰と陽の境界をなす真相こそが墨の黒であると述べ、この玄は私たちの認識の世界を超えており、私たちはそこから宇宙の奥深さを味わうことができると語っています。
このように墨の黒は無窮で神秘的な美感を持っており、それこそが東洋画・水墨淡彩の魅力だと言えます。
今後取り組んでみたい材料としては、ARやVRを活用して東洋画にアプローチしてみたいと考えています。そして、これまで着実に続けてきた集団知性を活用したソーシャルドローイングを、より積極的に進めていきたいと思っています。
ソーシャルドローイングとは、構想の段階から一般の方々が直接作品に参加し、途中の描画プロセスも見て、解釈する際にも一緒に加わることで、より大きな成果を生み出したいという願いから作ったジャンルです。
Q. 先生はNaesoongシリーズで大きな成功を収められ、「韓服を着た自画像」が先生のアイコンとして定着し、大衆的な人気を集めています。数年にわたり自画像を登場させて制作を続けてこられましたが、自画像以外に新しい素材で絵を描くお考えがあるなら、どのようなものを描いてみたいでしょうか。
A. 実は自画像以外にも多様な素材で制作しています。多くの方が自画像を中心に覚えてくださり、好んでくださっています。自分の姿を素材とすることは一つの手段にすぎず、いつでも変わり得る要素だと考えています。
最近新たに挑戦しているテーマは名画のパロディーです。ヨハネス・フェルメールの〈真珠の耳飾りの少女〉、ジャック=ルイ・ダヴィッドの〈アルプスを越えるナポレオン〉、エドヴァルド・ムンクの〈叫び〉、オーギュスト・ロダンの〈考える人〉、ミケランジェロの〈ピエタ〉など、さまざまな名画に「結婚」「韓服」というテーマと素材を加えて制作しています。今の時代の若い世代が結婚を避ける理由について伝えたいという思いから進めているテーマです。
Q. キム・ヒョンジョン先生は「作家の経営マインド」を重視し、「作家は一人の起業家」にならなければならないと強調してこられました。初期にはどのような方法で絵を知らせようと努力されたのでしょうか。また、自分の絵をうまく知らせるうえで最も効果的だった方法は何でしたか。さらに、現在追求されている具体的な経営マインドとはどのようなもので、先生をロールモデルとする後輩作家や学生たちにぜひ伝えたい言葉やヒントはありますか。
A. 作品は作家にとって子どものような存在だと思います。ですから、親として身内自慢のように子どもを誇りたい気持ちは、いつも満ちているように思います。企業も画一的な形式でマーケティングをするのではなく、その企業や製品に合ったチャネルやマーケティング手法をそれぞれ変えていますよね。企業のように考えてみるなら、画一的な方法ではなく、それぞれに合った方法を探してみることをお勧めします。
私は常に、自分の制作に合った方法を見つけようと試みてきました。オンラインではSNSを積極的に活用し、オフラインでは記憶に残る展示にするために、いつもさまざまな試みをしてきました。
アートフェアでは3秒で人の視線をつかまなければならないと言われますが、オンラインでは0.1秒のうちに視線を捉えられる画像を作らなければならないと思います。作品を知らせるために多様な試みをすることも大切ですが、最も重要なのは作品そのものだと考えています。中身を充実させていれば機会は訪れると信じて、さらに努力し、最善を尽くしてほしいと思います。
Q. 私たちの文化マガジンACCESSは持続可能な文化を追求するプラットフォームですので、キム・ヒョンジョン先生が追求する持続可能性についてお聞きしたいです。先生の作品や制作観は、どのような面で持続可能性を持っているでしょうか。
A. まず私の作品は、それぞれの絵に題名がありますが、そのシリーズを包括する呼び名も多くあります。「21世紀風俗図」「ソウル女性の物語」「Naesoong物語」などです。
その中でも「21世紀を生きるキム・ホンド、シン・ユンボクのような風俗画家だ」という言葉をよくいただきました。
今の時代を生きる私たちの物語であるからこそ、多くの観客の方が共感し、関心を寄せてくださいます。
記録物として時代を見ることができるため、後になって作品の中の素材が変化していく過程を見る楽しみもあります。作品の中の携帯電話のモデルは、すでに何度変わったか分からないほどです。そのたびに流行しているお菓子が描かれることもあります。やがて消えていきそうな美しい文化を描くこともあります(例:チムジルバン、サウナ、ハム〈結納品〉の文化)。
これからも私たちの身近にある文化を描き取っていきたいと思います。このように文化を収めていけば、持続可能な作品になると考えています。
Q. 最後に、先生の制作活動に着想を与えてくれる本・音楽・映像などのコンテンツはありますか。あればご紹介いただき、その理由もあわせて教えてください(新コーナー「Artist Pick」に掲載予定です)。
A. 私は三つのコンテンツすべてが好きです。絵を描きながら耳はいつも開いているので音楽を流していますし、週末には自分へのご褒美のように映画を一本観ます。そして一日の締めくくりは半身浴と読書です。新しい本を読むこともあれば、すでに持っている本を読み返すこともあります。読み返す場合は、最初に読んだときとは違って初めて目にする内容を発見できるからです。3〜4回読んでも、初めて見るような一節を見つけることがありますから。
また、一冊の本を精読するというよりも、いろいろな場所に本を置いて気軽に手に取れるようにしています。本に触れる理由は、本の中には普段では得られない知識まで収められており、制作に大いに役立つと思うからです。たとえば、現代では学べないことを本を通じて学んでいる、という感覚もあります。
ご紹介したい本は『東洋画とはどんな絵か』(チョ・ヨンジン著)です。お勧めする理由は、私たちの絵である「韓国画」は私たち自身が最もよく知っておくべきコンテンツなのに、「美術」といえば西洋の作品から思い浮かぶのがとても残念だからです。ふつう「東洋画」と聞くと「難しい」と思われがちですが、この本は東洋画をやさしく理解できるように説明しています。
この本を読み終えると、東洋画がぐっと身近で分かりやすいものに感じられるようになります。
また、作品を制作するときは映像を観ることが大いに助けになります。色彩の美しい映画をお勧めします。〈リトル・ボーイ〉〈つぐない〉〈her/世界でひとつの彼女〉〈ゴッホ 最期の手紙〉〈華麗なるギャツビー〉〈ムーンライズ・キングダム〉など、思い浮かぶ映画を挙げてみます。温かな色とミザンセーヌが素晴らしい映画で、作品を制作するときに助けになる映画です。
ありがとうございました。