韓国国際交流財団KF | [インタビュー]大胆な韓国画で語り合う韓国画家「キム・ヒョンジョン」
韓国国際交流財団(KF)のニュースレター「大胆な韓国画で語り合う韓国画家キム・ヒョンジョン」のインタビュー(2021年6月掲載)で、Naesoongシリーズと〈卵1パック、結婚する年齢〉展の企画意図、作品に込められたユーモアとウィットが光る〈Naesoong:アチャ(我差)〉〈結婚:天地の差〉、2018年平昌冬季五輪の際にコカ・コーラと進めたコラボレーションなどについて語りました。韓国画を世界に伝える活動に打ち込みたいという抱負を述べてインタビューを締めくくりました。
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1. 「韓国画のいま最も勢いのある作家」に挙げられていますが、その人気の秘訣は何だと思いますか。
画家の固定イメージ(中年)よりも若い年齢であるうえ、歌手のように韓国画家としてファンダム文化を形成した(SNSのフォロワー20万人)という点から、「韓国画の勢いある作家」とも呼んでいただき、「韓国画のアイドル」とも呼んでいただいているようです。また、コミュニケーションに主眼を置き、共感できる作品活動を続けていることを高く評価してそう呼んでくださっているのではないかと思います。私のモットーの一つが「美術によって大衆と語り合う」ことで、それだけ私は大衆とのコミュニケーションを何よりも大切に考えているのです。
2. 大きな話題を呼んだ〈Naesoong(ネスン——本心を隠して取り繕う態度を指す韓国語)シリーズ〉と〈卵1パック、結婚する年齢〉展についてお聞きしたいです。
Naesoong物語は、人々の表裏一体でない姿を戯画化しようという意図から出発しました。私はいつも他人のまなざしや評価に敏感だったのですが、私の前では笑いながら後ろでは別の表情をする人々が憎らしくばかり感じられて、彼らの外と内の違う姿を描き出そうとしていました。けれどもその過程で、私も結局は彼らと違わないと分かるようになり、結果としてほかの人ではなく、時々刻々変わる私自身をさまざまな作品で表現するようになりました。
〈卵1パック、結婚する年齢〉(卵1パック=30個、つまり30歳を指す言い回し)は、この時代を生きる女性たちの姿を表現したものです。どうしても女性は結婚や育児によるキャリアの中断、あるいは女性性について多方面に悩みが多いので、そうした部分を作品として形にしてみました。これからも表現したい物語がたくさんあるので、それをどう選び取っていくかが悩みです。
3. 作家の作品は発想も際立っていて、ウィットにもあふれています。性格はユーモラスなほうですか。
私がおもしろいかどうかは周りの人の判断に委ねるべきでしょうが、ウィットのあるものが好きです。おやじギャグも好きです(笑)。誰かがおもしろい話をしてくれると、それを書き留めてほかの人に話そうとしますし、私にいたずらをされれば調子を合わせるほうです。こうして笑いとおもしろさを追い求めていれば、ユーモラスな人間になれるのではないかと思います。そして私はかなり率直なほうだと思っています。制作の過程では、韓服を描く前にヌードで人を表現したうえで服を着せる過程を踏みます。こうして韓服を着せる理由の一つは「率直さ」を表現するためです。何をするにしても、できるかぎり自分の考えを率直に表現しようと努め、題材や題名のなかにユーモラスな仕掛けを入れておくことがあります。その例として〈アチャ〉という作品があります。「アチャ(我差、Oops)」——「我」の字に足りないという意味の「差」の字を付けて、隙のある人物の状態を隠喩すると同時に、そうした状況で人物が発するであろう「アチャ(しまった)!」という擬声語を題名にしたのです。人物はタンブラーからコーヒーが流れ出てバッグを濡らしているのにも気づかずラーメンを食べているのですが、人物がそんな致命的なしくじりに気づいたら、「アチャ!」という声が自然に出るのではないかと思います。自分の足りなさを意味しつつ、本当に「しまった!」と思う瞬間を、それなりにウィットをもって表現しようとしました。このほかにも結婚シリーズのなかに、ミケランジェロの〈天地創造〉をパロディにした〈結婚:天地の差〉があります。結婚前と結婚後の姿を比べるために描いた作品です。結婚前と結婚後は天地の差だ、ということを示すために題名を「天地の差」にしました(韓国語では「天地創造」と「天地の差」が語の響きで通じ合います)。ユーモラスかどうかは分かりませんが、(私の性格が)笑いとおもしろさを追い求め、率直さをあらわにするほうであるのは確かだと思います。
4. 作家が作品を通じて来場者に伝えたいメッセージがあるとすれば、どんなものでしょうか。
作品全体を貫く大きなテーマである「Naesoong」についてお話ししたいです。私はNaesoongを一種の嘘だと考えていました。本心とは違うことを言う嘘、誰かによく見られたい、他人のまなざしが気になるためにつく嘘です。ヘーゲルは、認められるための人々の努力を「承認をめぐる闘争」と表現しました。このNaesoongは、そうした承認をめぐる闘争の一環として起こる、ほぼ老若男女すべてにわたる本能的で普遍的な現象だと思います。だからNaesoongは必ずしも憎らしいばかりではありません。私の作品は、私自身の姿を収めた自画像です。上品な韓服を着た若い女性の上品でない日常を、風刺と諧謔を込めてお見せしながら、「私もこうなのだけれど、もしかしてあなたもそう?」という話をしたかったのです。さらに「こんな姿を愛すべきではないでしょうか。私たちはそうならざるを得ない存在でしょう」という共感のメッセージを投げかけることで、愉快に社会を解きほぐしたいと思いました。厳しい暮らしのなかで、私の絵を見ているときだけは「ああ、おかしい、大胆だ」と言っていただけたら、私にとってこれ以上幸せなことはないと思います。
5. 展示だけでなくコラボレーションでも話題になったと伺っています。どの仕事もすべて意味があり記憶に残っているでしょうが、そのなかでもとくに特別に記憶されている仕事はありますか。
特別に記憶されている仕事は、2018年平昌冬季五輪に合わせて進めたプロジェクトです。メインスポンサーのコカ・コーラとともに手がけました。韓服を着て冬季スポーツをしているNaesoongの女性を描きました。基本的な契約事項や意見の調整などを経て、私が手がけた種目はカーリング、ショートトラック、ボブスレーでした。Naesoongの女性が、世界中の人々の祭典である平昌冬季五輪に合わせてコカ・コーラとともにスポーツを楽しむという内容で制作し、ほかの仕事と変わることなく、コカ・コーラのプロジェクトもまた絶え間ない対話と数多くの試案のやりとりを重ねて懸命に準備しました。その結果、良い作品が生まれました。作家はコラボレーションを通じて、すでによく知られた大衆的なブランドや商品をプラットフォームとして活用して大衆に近づき、自分の美術作品を大衆の生活のなかに組み入れることができます。企業がより多くのアーティストとさまざまなプロモーションを企画し、広範なマーケティング戦略を展開すれば、芸術が大衆と呼吸する世界がより早く訪れると期待します。私が続けている活動がこうした前向きな流れに寄与していると思いますし、すべての企業コラボレーションのご提案に感謝しています。
6. 今後の計画や願いについても、ひとことお願いします。
最近の韓流の力は本当にすごいものです。K-POP、K-Drama、K-Movieなど、韓国の文化が世界に知られ、世界の人々が広く楽しんでいます。けれども美術は音楽に比べ、大衆によって享受される裾野が厚くないのが現実で、そのなかでもとくに東洋画、韓国画は注目されていません。ですから今後の計画は、制作に打ち込みながら、韓国画が世界的に広く知られるよう、より積極的な活動を続けていくことです。具体的には、今も韓国の本当に多くの作家が、韓国独特の情緒を込めた「韓国画」を描く仕事に打ち込んでいるという点を広く伝えたいです。願いがあるとすれば、韓国の美術市場がさらに成長し、多くの人が美術作品を享受できるような構造へと発展していってほしいということです。そのために、制作活動だけでなく活発な講演やSNS活動をしながら、私自身も努力していこうと思っています。2021年よりもっと良い作家になるために、また私たちの韓国画をより広く伝えるために力を出せるよう、皆さんのたくさんの応援をお願いします。