韓国画家 キム・ヒョンジョン ARTIST Hyunjung KIM

韓国石油管理院 | 対話

媒体 韓国石油管理院 区分 雑誌・定期刊行物 掲載日 2015.01.01 管理コード MI094

韓国石油管理院の社報 K-Petro Magazine vol.116(2015年12月号)70〜73ページに掲載されたインタビュー記事です。韓服を着た女性の日常をウィットをもって描く「Naesoongシリーズ」で注目される韓国画家キム・ヒョンジョンが、SNSを通じた大衆との対話、独特な制作方法、これから構想中の「ソーシャル・ドローイング」について語りました。文_ユ・ヒョンギョン、写真_チャン・ビョングク。

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韓服と日常の組み合わせでNaesoongを突く

SNSを楽しむ韓国画家、バイクに乗った韓服姿の女性と、崩れた姿勢でラーメンを食べる女性が登場する韓国画。意外な組み合わせだと思われるかもしれませんが、はじけるようなウィットと生き生きとした作品世界で多くの人に愛されている画家キム・ヒョンジョンの話です。

「私の作品は主に、韓服を着て平凡な日常生活を送る女性の姿をウィットを込めて表現しています。韓服が与える高尚さと秘密めいた感じに着想を得て、絵を描き始めました」

韓服よりもミニスカートやジーンズが好きであろう若い女性ですが、作品の主人公をより完璧に描写しようと、普段から韓服を好んで着るという徹底したプロ、キム・ヒョンジョン画家。彼女が表現する主題こそが「Naesoong(ネスン——本心を隠して取り繕う態度を指す韓国語)」です。

2013年に「Naesoong物語」というテーマで開催した個展の後、展示した絵が続けてすべて完売するなど話題を呼び起こし、その後「Naesoongオリンピック」「Naesoong、冬の物語」「Naesoong物語」など、展覧会ごとに大きな反響を得ました。とくに「Naesoongオリンピック」は、10日間で24,000人に達する観客を集めました。外見と内面が違うことを突く「Naesoong」が、キム・ヒョンジョン画家の作品のキーワードになった理由は何でしょうか。

「韓服という高尚な服を着て、そうでない振る舞いをする人々を描きたかったのです。実は自分をモデルにして女性のNaesoongを描いていますが、私が表現したいNaesoongはもっと広い意味です。性別に関係なく、誰にでもよく見られたい欲望はあるでしょう。そういうものを描き出したいのです」

束縛された自我と、韓国画の典型を破る制作

伝統的な韓国画とは違い、彼女の制作方法は独特です。自ら作品の主人公になって撮影した写真でスケッチをし、その上に服を着せていく方式です。そのうえで、人物は淡彩で、物は濃彩で表現し、衣服は水墨淡彩やコラージュの技法で表現します。

「韓服の下から身体のシルエットがちらりと見えるのですが、『人の内側がはっきり見える』というメッセージを伝えながら、スカートの内側でどんなことが起きているのか想像する機会を与えているのです」

自分がモデルになったとはいえ、はじめは他人の人格をかぶせていたため、絵の中の人物が自分だとは思ってもいませんでした。ところがある日、アトリエの鏡を通して、画面に収められた人が自分とまったく同じ人だということを改めて悟り、それが重要な転換点になりました。

「絵の中の人物が、見た目だけでなく、外部の視線を意識する中途半端な感情までも私と似ていたんです。それで、外部の視線に束縛されている自分の姿を素直に打ち明けていけば、その視線に対して少しずつ堂々としていけるだろうと思いました」

そうして「Naesoong」はいつしか告白的な自画像となり、自分の姿を認めることで、より心安く絵を描けるようになりました。自分の姿と日常から、より積極的に素材を探すようになりました。実際に彼女の作品〈闘魂〉は、食事を抜いて制作していて倒れそうになり、あわてて食べていた自分の姿を描き出したものです。ストローでフライドポテトをつまんで食べているのは、絵の制作中に手に油をつけないためでした。

彼女は作品を描きながら自身も自由を感じますが、観客にとっても「解放の出口」になることを願っています。

「息苦しい世の中で、まずは私の絵を見てひとしきり大きく笑ってください。さらに進んでは、観客が私の制作した内容を見て、自分自身を振り返るきっかけになればうれしいです」

観客との対話は、作品をさらに発展させられる機会

彼女はSNSをする画家としても有名です。ツイッターとインスタグラムのフォロワーだけで10万人。初めての展覧会を開くなかで偶然SNSの威力を実感し、積極的に対話を始めました。美術を愛する人として、大衆と距離を保ったままの美術への残念な思いから始まった対話でもあります。

「展示会場に行かなければ絵を見られないということが壁になると思いました。毎日目に見えていれば好みも生まれ、愛着もわくはずなのに、解決する方法はないかと悩んだ末に、SNSを思いつきました」

SNSを通じて観客へ近づいていくうちに、最近は広告に彼女の作品が活用されたり、企業との仕事も活発に展開しています。年輪と経歴を重んじる美術界において、「韓国画のアイドル」として美術を大衆的に広めているという貢献も認められています。

多くの人の期待を一身に受けている画家。画家の日常はゆとりがありそうだという思いとは違い、彼女は会社員のように出勤して、9時から7時まで絵に没頭します。そのあいだにも、大衆と対話するための仕事を後回しにはできません。SNSをしていると、ときには傷になる言葉もありますが、観客の生の感想を聞けるのがよく、自分の手を離れた作品が再解釈されていく過程も興味深いといいます。

「苦い話は苦い話のまま、よい話はよい話のまま、力になります。悪質なコメントも、ろ過されていない批評だと考えて、『ああ、そういう面もあるな』と受け止め、むしろ自分自身を発展させようとしています。ひと言でいえば、観客と対話するほど、懸命にまっすぐ自分の道を行こうと覚悟を固めることになる、といったところでしょうか」

誰もが気負いなく楽しむ美術を夢見る

実は絵にはもともと対話の壁がない、と彼女は考えています。言語が違っても誰もが共感でき、言葉で長く説明しなければ理解されないことを、たった1枚で明快に説明できるのも絵です。彼女は今後、対話する画家を越えて「ソーシャル・ドローイング」という新世界を開きたいと考えています。SNSを使って、大衆と作家がともに一つの制作について議論し、さらには作品を完成させるというものです。

「美術が誰もが楽しめる文化になればよいという思いから構想しています。まだソーシャル・ドローイングという名のもとに始まったものはありませんが、大きく見れば今もやっていると思います。素材を提案されることもあり、思いもしなかった解釈で私の作品が新たに生まれることもありますから」

気負いも壁もない美術を夢見る彼女は、来年3月に「Naesoong遊園地」というテーマで、もう一つの展覧会を準備しています。観客が遊園地に来たかのように美術と遊び、画家と楽しく対話できる絵。観客と対話しながらキム・ヒョンジョン画家が開いていく、楽しい美術の世界が期待されます。

文_ユ・ヒョンギョン 写真_チャン・ビョングク