世宗学堂 | 韓国画のアイドル 韓国画家キム・ヒョンジョン
世宗学堂財団の創立10周年特別インタビュー「ヌリベッ(ネット友)サランバン」の2番目のお客さまとして、韓国画家キム・ヒョンジョンが紹介されたインタビュー記事です。「Naesoongシリーズ」の制作の背景と画法、海外展示での反応、BTSの韓国画による肖像を制作したきっかけ、SNSや企業との協業の活動、2022年の計画などを、作家自身が答える質疑応答の形式で構成されています。執筆は世宗学堂財団広報協力チームで、紙面に写真家のクレジット表記はありません。
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冷蔵庫の前に座ってピザを食べ、配達バイクに乗り、ビリヤードをする人。私たちの日常で見かける風景のようですが、いずれも美しい韓服をまとった女性なので目を引く絵があります。しかも、韓国の伝統的な絵画である韓国画で描かれています。この絵を描いた韓国画家キム・ヒョンジョンに会いました。
Q. こんにちは。世界中の世宗学堂の学習者に向けて、「韓国画家キム・ヒョンジョン」の紹介と自慢をお願いします。
こんにちは! 韓国画のアイドルと呼ばれている韓国画家キム・ヒョンジョンです。まなざしと通念についての告白的な自画像である「Naesoong(ネスン——本心を隠して取り繕う態度を指す韓国語)シリーズ」で制作活動をしています。
「Naesoong」を辞書で引くと、「外見はおとなしいふりをしながら、内心はしたたかであること」と出ています。自分の足りない部分は隠したい、他人から認められたいという気持ちは誰にでもありますよね。私も外部の評価や通念から自由ではありませんでした。このまなざしからの逸脱、そして告白的な自画像こそが「Naesoong物語」です。
技法の面では、伝統的な水墨淡彩画に西洋画のコラージュを加えた新しい画法をつくって制作しています。韓紙コラージュで韓服チョゴリ特有のかさかさとした質感を立体的に生かそうとし、水墨で韓服のチマを描いて透明さを込めました。淡彩では人物と小道具を描きます。東洋、そして東洋画の伝統的な美の要素を生かしながら、同時代のなかで気軽に享受し共感できる仕事をしています。
Q. ソンファ芸術中学・高校、ソウル大学東洋画科、大学院まで一貫して美術を続けてこられました。絵を描きたいと思ったのはいつからか、韓国画はいつから始めたのか、数ある絵画の分野のなかで韓国画を選んだ特別な理由があるのか気になります。
ごく幼いころ、姉について絵を描いたのが始まりでした。それから小学3年から本格的に絵を学び、順に芸術中学・芸術高校を卒業しました。芸術高校で過ごしたので、さまざまな専攻や材料に触れる機会が多くありました。専攻を選ぶ過程でいろいろな専攻に触れてみて、私にとってもっとも深い感興を呼び起こしたのが東洋画、その中でも韓国画でした。画仙紙にしみ込む澄んで深い墨のにじみと、その上に降り立つ清らかな色合いがつくる調和が与えてくれた新鮮な衝撃は、今も鮮明に思い出します。さらに、そのころ読んだオ・ジュソク先生の『韓国の美 特講』という本も、私の決心を固めるうえで大きな役割を果たしました。先祖たちのさまざまな作品のなかでも、とくに私は檀園・金弘道、蕙園・申潤福の作品が好きです。風俗画に込められた率直さとウィット、画面構成のセンスと筆づかいの力量などには、韓国画の境地と趣をそのまま伝える力があるからです。
Q. ニューヨークのメトロポリタン美術館での個展を始まりに、ニューヨーク、香港、北京、ベルリンなど海外展示も頻繁に行っています。海外では作家を通じて韓国画に初めて触れた方も少なくなかったと思いますが、来場者の反応はいかがでしたか。
私たちにとってタコスやケバブを食べ、ラッシーを飲むことが一つの意味ある経験になるのと同じように、外国の方にとっては箸を使ってキムチを食べてみることが韓国文化に触れる独特な経験だろうと思います。ドイツの展示だけでなく香港の展示でも、私たちにとって日常的なものが外国の方には説明が必要な新しいものだと実感し、文化的多様性というものに驚きました。たとえばドイツの観客には、韓服がどんな服なのか、韓紙と墨が何なのか、そしてNaesoongという言葉がどんな言葉なのかについての説明が必要でした。それだけ私たちの文化と絵が彼らには見慣れないものだったのだと思います。けれど、そうした見慣れなさにもかかわらず、私の作品を不思議に思いながらおもしろく見てくださいました。それを見て、私たちの韓国画が世界でも通じうるという可能性も垣間見ました。私の「Naesoong」をもっと普遍的な共感を得られるものへと発展させて、いつかは海外でもう一つ個展を開いてみたいです。
Q. インスタグラム、フェイスブック、ユーチューブなど各種ソーシャル・ネットワーク(SNS)の活動を活発にされ、フォロワーも20万人です。造幣公社、クレジットカード、製菓など協業も多くされています。画家といえばアトリエで絵だけを描く人だと思っている方も多いのですが、さまざまな分野で活動される作家の考えがあるように思います。それは何でしょうか。
私がSNS活動を活発にしている理由も、さまざまな人々との交流によって、押し寄せる新しい情報と新しい技術につねに触れられるからです。最近は誰もが第4次産業革命の時代を語っていますよね。芸術分野も例外ではありえません。グーグルのAI画家ディープドリームが描いた絵が1億ウォンで落札されたこともあります。AIプロジェクトの「ネクスト・レンブラント」は、レンブラント特有の画風を構図、色彩、油彩の質感まで模倣して再現しました。亡くなった画家の画風を生き返らせることが可能になったのです。
時代の変化に目をつむるのではなく、歩調を合わせて、あるいは一歩先んじてこれらの技術をうまく活用し、おもしろい仕事を試みるべきだと思います。新しい分野を開拓できる機会になるかもしれませんから。ペク・ナムジュン(白南準)のビデオアートのように。古い絵画をデジタル化した展示もとても興味深かったですし、偶然の機会に私の作品のNaesoongの女性たちを3Dプリントで制作した経験があるのですが、本当におもしろく、新しいものでした。何であれ、新しいことを試みる過程で楽しくなかったことはありません。だからこそ、素早く変化し、その変化をすぐに反映する韓国に生まれたことを幸運だと思います。韓国の創作分野はさらに多様な姿で発展していくでしょうし、私は可能なかぎりこのすべての変化を素早く受け入れようと努めるつもりです。
そして、創作者がともに成長するには、さまざまな専攻を持つ芸術家の交流が必要です。私もH&A CENTERというキム・ヒョンジョン・アート・クリエイティブ・センターを運営しています。映画、繊維芸術、社会科学、理工系などさまざまな専攻を持つ研究員の方々とともに、アイデアの構想からコンテンツ制作まで手がけているので、講演やコラボレーションなどさまざまな領域でも効果的な結果が出るのです。こうした経験を通じて、知識共同体の力がコンテンツ産業をどれほど効果的に発展させられるのかを悟りました。活動領域を広げ、芸術が社会全般にまんべんなく寄与できるよう、楽しく挑戦していくつもりです。
Q. 最近、BTSの韓国画による肖像を公開されました。制作しようと思った理由と、公開後の反応が気になります。
以前は、現代ではあまり着られなくなって、伝統的で美しい韓服が忘れられていくようで残念でした。けれど今の韓服は、西洋のドレスに劣らず色合いも自然で美しいものが市中に多く出ているのが分かりますよね。また韓国的な要素が刺繍で施され、アクセサリーとともに韓服をより美しく見せてくれているので、私も韓服への見方が変わりました。私によって韓服への抵抗感が少しでも減り、親しく感じてもらえるなら、これ以上ありがたいことはありません。それで、こうした私たちの伝統を今の韓流の力と結び合わせれば、韓流を広げるのに役立てるのではないかと考えるようになりました。BTSの韓国画による肖像への反応としては、これまで見たことのない新しい視点で新鮮だ、新しいという声がありました。また、ファンタジーを満たしてくれる効果もあり、とても肯定的な反応が多くありました。
Q. 世宗学堂財団についてご存じですか。世宗学堂の仕事についての作家の考えをお聞きしたいです。
世宗学堂財団は、韓国語と韓国文化を学びたい学生たちにさまざまな学習を提供することで、私たちの文化を世界へ伝え、交流する財団だと理解しています。韓国画を通じて世界に韓国の美術を伝える画家として、世宗学堂財団は私たちの文化を伝える重要な媒介の役割を果たす団体だと思います。
Q. 世宗学堂を通じて韓国の伝統音楽を知り、民謡を専攻された方もいます。海外で私たちの伝統文化に関心が生まれて学びたいという方は、学べる場所が多くなく苦労されています。韓国画を描きたいという海外の学習者に伝える助言はありますか。
まず、韓国画をたくさん見てくださいとお伝えしたいです。絵について、心の目と耳だけでなく、実際の私たちの目と耳を開くよう努めてくださいということも。ときには韓国画が与えてくれる視覚的な趣、あるいは感性的な味わいそのものを楽しむだけでも十分かもしれませんが、韓国画の歴史、技法、材料の特徴を知って見れば、はるかに大きなおもしろさを感じられると思います。
たとえば、韓国画・東洋画は右上から左下へと視線を移しながら鑑賞するという基本的な鑑賞の原理を知って見るのと、知らずに見るのとでは、とても大きな違いがあります。本や講演、動画などで別途に勉強されれば錦上に花を添えることになりますが、それが難しければ、展示に行かれるとき、展示についての説明が提供されるドーセントの案内の時間に合わせて行かれることをおすすめします。ドーセントの説明を聞きながら韓国画を鑑賞すれば、そのおもしろさと趣を何倍も大きく感じられるでしょう。
Q. 美術界も新型コロナで多くの困難を経験しました。作家はむしろ作品に集中できる機会になったとおっしゃっていました。現在構想されている作品や活動はありますか。2022年にやりたいことは何でしょうか。
どんな題材を描くかは、ずっと開いたままにしています。制作についての私の目指すところを申し上げると、頭で描く絵ではなく、胸で描く仕事をしたいと思っています。これは率直な仕事ということです。とても長いあいだ制作を続けながら、より率直に、胸で伝えられる仕事をする「境地」に至ることが、画家としての究極の夢だと思います。そして、私が身を置くキム・ヒョンジョンアートセンターの事業的な成果ともかみ合う話ですが、国際的に韓国を代表する韓国画家であり、韓国画の魅力と美しさを大衆の前に広く伝える「文化の伝道師」になりたいです。
最近の韓流の力は本当にすごいものです。K-POP、K-ドラマ、K-ムービーなど、韓国の文化が世界に知られ、世界の人々が広く楽しんでいます。はじめは「韓国は手先が器用な国として有名なのに、なぜ世界的なアーティストに思ったほど韓国人がいないのだろう」という疑問が浮かびました。そしてその疑問を通じて、今の韓国の美術市場を理解する必要性を感じましたし、また私も韓流を広げることに寄与すれば、良い結果を成し遂げられるのではないでしょうか。私は2017年に米国最大の経済誌フォーブスが選ぶアジアで影響力のある30歳未満の30人に選ばれました。この機会を通じて、K-アート、韓国画を世界的に広く伝えられるよう、積極的な活動とさらなる制作への専念を計画しています。ここからより細かな計画としては、韓国画のアール・ヌーヴォーを表現してみたいと考えています。アール・ヌーヴォーの繊細で美しいイメージを私の韓国画と融合させ、ひと味違う作品を完成させてみたいです。そして2022年の最初の招待展が、仁川のパラダイスシティホテルで今年1月28日から2月20日まで行われますので、たくさんの関心を寄せていただけたらうれしいです。(笑)
Q. 最後に、世界中の世宗学堂で韓国語と韓国文化を学んでいる学習者に応援の言葉をお願いします。
ひとりの画家の話をお伝えしたいです。天才画家「ピカソ」です。ピカソはもちろん生まれ持った才能もありますが、「とてつもない努力家」だと思います。ピカソは世界的にも多作の作家として有名です。私がピカソの制作日数と制作量を計算してみたところ、2.2日に1点の作品を完成させていました。実のところ、この制作量はとてつもないものです。ふつう美術大学に通う学生なら、1年に5〜6点を完成させるのもぎりぎりでしょう。このように世界の天才として知られるピカソもこれほど努力して制作したのですから、多くの時間を投じて楽しみながら勉強してくださいと応援したいです。切実に好きだという気持ちを持って地道に勉強すれば、いつも良い結果があるでしょう。見方によっては、誰もが言うありふれたメッセージでもあります。難しい時期はいつでも訪れますが、そのたびに自分の夢を思い出しながら一瞬一瞬を乗り越えていけば、良い瞬間が訪れると確信しています。世宗学堂の皆さん、ファイト!